KLX250でオフロードへ

LIFE

私は職業柄、平日に休みがやってくる。

家でまったり、アマプラやネトフリを見たりyoutubeを見たりして過ごすこともあるが、

無性に出かけたくなる時がある。

仕事→休日→仕事→休日・・・

何の変化もなく繰り返される日常が、たまに少し怖くなる。

このループの中に永遠に取り残されしまいそうな錯覚。

そんな時、私はバイクに乗って出かけることにしている。

私の愛車は、漢(おとこ)Kawasaki KLX250 ※2003年式

通称オックス君

オックス君はキャブ仕様のオフロードバイクで

当時「闘う4スト」のキャッチフレーズで販売されていた。

不器用な私にとっては、オフロード・オンロード共に充分過ぎるスペックである。

プロテクターを付け、オフロードブーツを履き、オックス君にまたがると、

「おっ、やっと準備出来たか、待ってたぜ!」

と迎えてくれる。

街中を抜け出し、風を感じながら走り続ける、徐々に人も車も少なくなってくる。

次第に雑音が小さくなり、空気が変わる。

くねくねとした山間部を暫く走り、そして林道の入口に到着。

目の前には、細くて、薄暗いオフロード(未舗装路)が、山林の中に、ひっそりと奥まで延びている。

異世界へ通じるかのような道がそこにある。

聞こえてくるのは、風が揺らす木々のざわめき声と、どこか無機質な川のせせらぎのみ。

「一人でここに入るつもり?何があっても知らないよ」と言わんばかり。

一瞬、心細さが頭をもたげる。

「気にするな、さあ、行こうか」

オフロードを走るために生まれてきた、オックス君に促され、ゆっくりと進み出す。

オックス君のタイヤが、アスファルトとは全く違う、オフロードの感触を私に伝えてくれる。

砂利、土、水溜まり、落ち葉や枝等を踏みしめて行く感触、振動がなんとも心地良い。

次第に肩の力が抜け、周囲の自然に目をやる余裕が出てきた。

今まで、どことなくよそよそしかった木々のざわつきや、川のせせらぎが少しずつフレンドリーに感じられる。

「ねぇ、街から来たんでしょ? なんか疲れた顔してたよ。

深呼吸してみなよ、少しだけ山の気を分けてあげる」

山の気はどこか懐かしい匂いがする。

ゆっくりと吸い込んでみると、

子供の頃、友達と遊んだ記憶、家族で旅行に行った記憶、

楽しくて幸せだったノスタルジックな記憶がおぼろげながら頭の中に映し出される。

山の気は、疲れ顔の私に、癒しを与えてくれる。 

オフロードの勾配がきつくなり、ガレた箇所にさしかかる。

また少し肩に力が入る。

しかし、オックス君の挙動は至ってしなやかで、安定している。

「緊張すんな、俺に任せとけ」

さすがオックス君。有難う。頼りにしてるよ。

周囲の自然やオックス君と会話しながら、気が付けば山頂の開けた場所に到着。

上半分が空と雲、下半分は見渡す限り山また山、というロケーション。

岩に腰掛けて、コンビニで買ったパンと、おにぎりを食べ、コーヒーを飲みながら一服する。

目を閉じて、しばし瞑想。

勝手に色んな事を考えようとする自分の心をなだめ、「無」に留まる。

ゆっくりと心が満たされていくのを感じる。

・・・・・・・充電完了。

お待たせオックス君。さあ、帰ろうか。

再びオックス君にまたがる。何故かホッとする。

「ゆっくり休めたかい?」

「うん。いつも色んなところに連れて行ってくれて有難うオックス君。」

帰り道は舗装林道になっていて、リラックスして下れる。

暫く下っていると、枝?木の実?が上から落ちてきて私の肩にポンっと当たった。

「バイバイ、街から来た人。気が向いたら、またた来なよ」

山の木々に、そう言われているような気がした。

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